京都府南部の和束町は、茶づくりが暮らしと産業の中心にある町です。煎茶や碾茶など、商品として届けるためのお茶が育てられる一方、つくり手の家庭では、日々のお茶としてほうじ茶が親しまれてきました。
桶力茶店が和束で見聞きしてきたのは、茶を余すことなく生かし、暮らしに合う味へ整える知恵です。
茶葉は、摘採してすぐに焙じればよいとは限りません。しばらく寝かせてから焙煎することで、味がまろやかになると考えるつくり手もいます。また、選別の過程で分けられる茎も、香りや甘みを持つ大切な原料です。
こうした知恵は、派手な商品説明にはなりにくいものです。しかし、毎日の仕事と暮らしのなかで親しまれ、受け継がれてきたからこそ残った、土地の記憶でもあります。
和束のほうじ茶を飲むことは、単に「京都産のお茶」を選ぶことではありません。茶を育てる人のすぐそばにある飲み方や、素材を生かし切る感覚に触れることでもあります。
※本稿は桶力茶店が地域で聞いてきた話をもとにした導入記事です。今後、茶農家さんへの聞き取りを重ね、家庭ごとの飲み方や焙煎の考え方をお伝えしていきます。