京都のお茶というと、高級抹茶や煎茶、茶道、そして歴史ある茶商の屋号が注目されます。しかし、京都最大の茶の産地である和束の文化は、売られるお茶だけでできているわけではありません。
仕事の合間に飲むお茶。家族で囲むお茶。人を迎えたときに淹れるお茶。食事と一緒に、気兼ねなく何杯も飲むお茶。そして、新たな美味しさにたどり着くための実験的なお茶。ほうじ茶には、その土地で茶をつくる人たちの日常が表れます。
和束では、良い茶を外へ届ける営みと、自分たちが毎日飲むためのお茶が、同じ暮らしのなかにあります。そこで選ばれてきたほうじ茶は、華やかな評価軸だけでは測れません。飲み飽きないこと、香りで気持ちがほどけること、家の食事に合うことも大切な価値です。
桶力茶店は、茶葉の品質を伝えると同時に、こうした暮らしの側の価値も残したいと考えています。
一杯のほうじ茶には、数字にしにくい記憶があります。湯気の向こうに人の気配があり、香りのなかに土地の日常がある。それを知ると、ほうじ茶は少し違って見えてきます。